先日、10年来の知り合いと久しぶりに食事をする機会がありました。お互いの近況を話したり、昔話に花を咲かせたりしていたのですが、ふとした拍子に現場の愚痴話になりまして…。介護の仕事をしているその友人が、こんな話をしてくれたんです。
「うちの利用者さんのお孫さんがね、おじいちゃんの介護をしてて、学校辞めるって言ってるんだよ。」
その言葉を聞いたとき、私は以前受けた研修で「ヤングケアラー」という言葉を学んだことを思い出しました。たしか、家族の介護や家事、世話など、本来大人が担う役割を子どもたちが担っているという内容だったはず。
友人の話を詳しく聞いてみると、そのお孫さんは小学生の頃からおじいちゃんのお世話をして、高校に入ってからは介護や家事、さらにアルバイトもして家計を支えていたそうです。学校も遅刻や欠席が増え、進学も諦めてしまう状況とのことでした。
私は思わず、昔の研修資料を引っ張り出して、相談先の連絡先が載っているページを友人に送りました。そして、「次の訪問のとき、その子とお母さんに『ここに相談できるよ』って教えてあげて」とお願いしたんです。友人も「もちろん!」と快く引き受けてくれました。
■ヤングケアラーって知っていますか?
ヤングケアラーという言葉、最近少しずつテレビや新聞でも耳にするようになってきました。でも、まだまだ知らない方も多いんじゃないでしょうか。
簡単に言うと、本来なら大人が担う家族の介護や世話、家事などを、18歳未満の子どもたちが日常的に行っている状態のことをいいます。
実際、厚生労働省の調べによると、中学生のおよそ17人に1人が、何らかのケアをしているそうです。でも、そうした子どもたちの多くが、「自分がヤングケアラーだ」とも思っていませんし、「家族だから当たり前」「手伝うのは当然」と思い込んで、誰にも相談できずに抱え込んでいることも多いんです。
■このままだと、どうなってしまうの?
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私も今回改めて調べてみて、この問題の根深さに胸が苦しくなりました。もしこの状況が続いていけば、いろんな社会問題に繋がってしまうんです。
◎貧困層の増加
進学や就職のチャンスを失った子どもたちが、大人になっても安定した仕事につけず、貧困の連鎖が続いてしまう可能性があります。
◎少子化の進行
介護や生活の負担を抱えたままでは、恋愛や結婚、出産を考える余裕もなくなり、さらに少子化が進んでしまいます。
◎高齢化の加速
若い世代が減る一方で高齢者が増え続け、介護の担い手不足もますます深刻に。すると、今度はその子ども世代もまたヤングケアラーになってしまうかもしれません。
◎国力の低下
教育や経験を積めなかった若者たちが増えれば、働き手も減り、経済も回らなくなってしまいます。日本全体の元気がなくなってしまうのは避けたいところですよね。
■まずは、気づいて声をかけてあげよう
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でも、こうした問題はすぐに制度や法律が変わるわけじゃありません。だからこそ、私たち一人ひとりの「気づき」がすごく大事なんだと思うんです。
もし、あなたのまわりに
「最近、学校を辞めたがってる子がいる」
「いつも疲れた顔をしてる子がいる」
「家のことで忙しくて遊べないって言う子がいる」
そんな子がいたら、ぜひそっと声をかけてみてください。
「何か困ってることない?」
「誰かに相談してみた?」
たったそれだけでも、その子の心が少し軽くなるかもしれません。もしできるなら、地域のケアマネージャーさんや福祉の相談窓口を紹介してあげてください。うちの事業所でも「ナゴミのケアマネージャー」に声をかけてもらえれば、できる範囲で力になれると思います。
■最後に
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ヤングケアラー問題は、決して他人事じゃありません。私たちの身近に、知らず知らずのうちに苦しんでいる子どもたちがいます。今回の友人の話をきっかけに、私も改めてこの問題に向き合う気持ちになりました。
誰かが動き出さなきゃ、何も変わりません。でも、誰か一人の力じゃなくて、みんなで少しずつ手を差し伸べていけば、きっと状況は良くなっていくと信じています。
もし、この記事を読んで「自分にもできることがあるかも」と思ってもらえたら嬉しいです。そして、もしで困っ周りで困ってている子や家庭があれば、どうか声をかけてあげてくださいね。
私も、これからもできることを続けていきたいと思います。
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